ワイドマクロ撮影:135フルフレームサイズを用いたくなる撮影
私は135フルフレームの撮影には、PENTAX K-1を使っています。
実はK-1を使っている理由にあまり深いところはなくて、いや逆に深いんですが(笑)ある大切な方から引き継がせて頂いたことがきっかけとなって図らずも使わせて頂くことになったのですが、今では非常に使いやすい機体かつユニークな機構をもっているのでなかなかのお気に入りです。
撮影そのもののメインストリームは動画、静止画ともにマイクロフォーサーズ機であるPanasonicのG,GHシリーズなので、K-1では135フルフレームのセンサーサイズを生かした撮影をしたい時に持ち出します。
またミラーがあることから、凄い吹雪のなかとか、風が強い海っぺりの撮影なんかでも使います。そんな中でもどうしてもレンズを変えたい時が出てくるのですが、レンズを外したらすぐにセンサーがこんにちは、となるミラーレス機より幾分安心感があるからです。
私が思う135フルフレームのセンサーサイズが生きる、そしてそれを使いたい撮影の一つに、大口径・・概ね開放F値がF1.4~F2.0前後・・の超広角レンズによる近接撮影があります。いわゆるワイドマクロ撮影ですね。
まず、超広角レンズはワーキングディスタンスが短いレンズが多いので、主題にぐいっとよることができます。
その時絞りを開放、あるいはそれに準ずる絞りで撮影すると、広い画角を生かして周辺を大きく取り込みながら主題を大きく写せると同時に、大きく取り込んだ背景をボカして、主題とのフォーカス度合いの差によって強い立体感、空気感を演出できるのです。
例えばこんな写し方が結構好きです。
被写界深度はレンズの焦点距離、絞り、被写体との距離、そして許容錯乱円の大きさに依存していて物理的な計算式で求まりますが、このうち許容錯乱円はちょっと横においておいて概ね、
- 焦点距離 → 長い(より望遠よりな)ほうが被写界深度は浅くなる(ぼける)
- 絞り → 開放よりのほうが(F値が小さい)ほうが被写界深度は浅くなる
- 被写体との距離 → 近いほうが被写界深度は浅くなる
のような性質を示します。
絞りと被写体との距離に関しては当たり前ですがセンサーサイズに依存していません。が、焦点距離に関してはセンサーサイズの影響を受けます。
たとえば、対角画角110°を135フルフレームサイズで得る場合は焦点距離15mm、フォーサーズセンサーで得る場合は7.5mmとなるため、絞りが同じ、被写体との距離も同じ条件下で更に、同じ画角の撮影範囲を得ようとするのであれば、より焦点距離が長い135フルフレームサイズのほうが被写界深度が浅くなります。
ただこれは、ボケるのが良い、悪い、という話ではありません。
その人がどういう撮影をして、どういう写真を得たいか、によって求めるものが変わります。
私の場合は、ワイドマクロの場合は被写界深度がより浅いほうが自分の得たい画像が得やすいので135フルフレームを使いたい、というだけです。
PENTAX、DFAの大口径超広角レンズがありません
ところが、です。
135フルフレームサイズのカメラをラインナップしているメーカー、キヤノン、ニコン、SONYいずれもまず 24mmF1.4がありますし、
サードパーティーの雄、SIGMAからは20mmF1.4 Artとか
14mmF1.8 とかいうモンスターのようなレンズも出ています。
一方、PENTAX。もともとAPS-Cを軸に展開してきたメーカーでもありますので、まだフルフレームのイメージサークルをカバーするデジタルレンズ群(D FA)の整備が道半ばで・・
RICOH IMAGINGのホームページ:PENTAX K-Mount Lens Line Upより抜粋
ロードマップを見ても、大口径広角単焦点、超広角単焦点ともに、計画が2019年以降。
現在、この領域で唯一使えるのはHD PENTAX-D FA 15-30mm F2.8の広角端側なのですが
もう一段明るい単焦点を出してほしいなぁ、と願っているのは決して私だけではないはずです。
超広角単焦点(15mm~18mmぐらいの開放F値2.8前後?)、広角大口径単焦点(24mmF1.4?)ともに空席の状態なんですが、CP+2019でのRICOH/PENTAX事前情報を見ても、どうやらKマウントのうちDFAレンズとして展示されるのはHD PENTAX-D FA 70-200 F4、そしてHD PENTAX-D FA* 85mm F1.4の模様なんですよね。開発発表もないようであれば、2019年度の後半から2020年にかけて、にならないと出てこないのかもしれません。むむ。
kalipe再登場、Irix 15mm f/2.4
ただ、以前、kalipeでも紹介させていただいたスイスのレンズメーカー、Irix。(アイリックス)
Irixがリリースしている15mm f/2.4というレンズが、まさにこの空洞を埋めてくれます。
新興レンズメーカー”Irix”のレンズを試す。その1
新興レンズメーカー”Irix”のレンズを試す。その2
現在、15mm f/2.4に加えて、更に広角の11mm f/4、そして逆に望遠マクロである150mm f/2.8 MACRO 1:1 がラインナップされています。そして11mmと15mmでは廉価版プラ外装のfirestone、金属外装で防塵防滴構造のBlackstoneの2系統、150mmはDragonflyという単一ラインナップで展開されています。
私は15mm f/2.4(廉価版であるfirefly)を購入して使用しているのですが、MFしか使えないレンズですし、もちろんレンズ内手ぶれ補正なんてついておらず、F1.4とかF1.8とかびっくりするような大口径、というわけではありません。
が、それでも15mm f/2.4という存在は貴重、特にKマウントのD-FAでは一層貴重です。以前書いた記事の通りで、多少クセはあるもののその描画性能とコストパフォーマンスは素晴らしいものがあります。
そして開放からそれなりに整った描画をするので、前半で書いたようなワイドマクロ撮影には全く問題なく使用できます。
SIGMA、TAMRONといった有力サードパーティからの調達ができないPENTAX KマウントD-FA、そして計画がはっきりしていない超広角、広角焦点域の明るいレンズ。今後の動向によっては、Irixを使ってみる、というのは検討する価値があることだとは思います。
要検討な箇所
新興レンズメーカー”Irix”のレンズを試す。その2のほうに少し書いたのですが、このレンズにはいくつかの突っ込みどころがありますので、購入にあたってはそのあたりは考える必要があるかとは思います。
まず開放撮影時では周辺減光も派手にでます。アンダー目の露出などで撮影すると一層目立ちます。
ただ、私はこの落ち方は嫌いではありませんが(笑)
あと、もう一つ。K-1で15mm、となると、星景撮影向けに考えられている方がいらっしゃるかもしれません。それについてはちょっと問題があるかも。
夜明け直前に駆け込みで撮影した星の写真で申し訳ないのですが・・・以下写真の赤枠で囲った中央部、そして周辺部の等倍切り出しをご参考までに載せてみます。ちなみに、絞りは開放です。
ピント怪しいですが、点像としては解像できているっぽいです。
カモメが飛ぶ(ように見えるほど収差がでまくる)ほどの盛大なものではありませんが、コマ収差はそれなりに出ている・・ような気がします。この手の収差は、特殊な特性を有する硝材から作ったレンズをふんだんに使っている高価なレンズからみると大きく水をあけられていると思います。
待ち、が正解かも
結局のところ、光学性能的に気合いが入ったモノに関しては、PENTAX純正として計画されている広角大口径単焦点、あるいは超広角単焦点を待ったほうが正解かもしれません。
ただ、比較的安価なので、”それまでのつなぎ”としてでも、純正レンズほどの端正な写りはしないけれども、独特な描画をする玉、として試してみるなど、私個人としては15mm F/2.4はおすすめしたいレンズで、しかもかなり好きなので現在Firefly→Blakstoneへの変更を検討しているぐらいです。
また、豊富な選択肢のあるキヤノン、ニコンユーザーの方が、Irixというメーカーに目を留めることは少ないかもしれませんが(笑)、同社から現在ラインナップされている11mmF4、150mmF2.8の等倍マクロ、などは他にあまりないタイプのレンズですので、”優等生な写りするレンズばかりじゃつまらない!”とお考えになったりするような事があるなら、こんなメーカーもあるのか、とご検討の一端に加えてみるのはいかがでしょうか。