Miho Yamazaki “a letter to – あの場所と、あなたと私と私たち。”

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現在開催中の展示を一つご案内します。
横浜、石川町のギャラリー、gallery fuで開催中の展示、Miho Yamazaki “a letter to – あの場所と、あなたと私と私たち。”です。

会期は4/1(日)まで、12:00 – 20:00(最終日は18:00まで)、月曜日は休廊日となっております。

写真は手段の1つに過ぎない

この記事を書いている私自身も写真作家の端くれなのですが、ある個人が写真展を開催する意味はいくつかあると思います。
そのうち大きなウェイトを占めるものの一つは、自身が制作した写真作品そのものを見せるため、というのがあって、大概はこちらだと思います。
もう一つは、見せたいのは写真作品そのものではなく、その作品群全体が放つ社会的なメッセージ、あるいは作家自身が成し遂げたいと思っている”行為”の発表です。
今回の”a letter to…”は、後者のウェイトがとても大きい展示です。

展示は写真という形態をとってはいますが、その写真もフレームに入ったプリントであったり、L判、ブック、Instagram、映像などを複合的に用いたものとなっており、更には作家ではない(然しながら無関係ではない)第三者が撮影した写真も、その展示の一部として用いられています。
展示されている作品群は主として、Yamazakiさんご自身が東日本大震災後の東北を訪ね、そこの人々と交流をし、自身の日常の写真を渡すことと引き換えに撮らせてもらった彼の地の方々の”手”の写真と映像作品、そしてInstagramを使って募集した、Yamazakiさん以外の人々が撮影した被災地にまつわる写真。

そうして、Yamazakiさんが本展示で提示したかったものは”生活の交換”だと言います。以下に、ご本人の言葉を引用させていただきます。

本展覧会は、MihoYamazaki自身が東日本大震災後の東北を歩き、自身の日常を撮った写真と引き換えに東北の人々の手を撮影、それを用いて制作した作品からなる第1部と、彼女以外の人々が生活の中で撮影した被災地にまつわる写真からなる第2部の2パートで構成されます。
決して明確に分かつことのできないこれら2つの部分が展示空間の中で交ざり合うとき、そこにはひとつの結び目が立ち現われることでしょう。
「a letter to」ーあの場所と、あなたと私と私たち。MihoYamazakiが、私たちの日常と生活を問います。

  - gallery fu HPより引用

「皆それぞれに生活がある。東日本大震災後、そんなことを考えひたすら自分の日常を撮っていました。その後東北を歩いた私は、その写真を差し上げるのと引き換えに現地の方々の手を撮らせて頂いたのでした。なぜ手なのか? 手は私が愛して止まない身体の一部だからです。そこには生活が刻まれているから。行ないたかったのは、つまるところ生活の交換だったのです。そしてそれは、展示会場をご高覧くださった皆様を巻き込みながら、これからも続くでしょう。(Miho Yamazaki)」

 - Facebookイベントページより引用

震災後、7年という月日が経過しようとしています。毎年、3.11が近づくとメディアには「忘れない」とか「絆」という言葉が多く登場するようになりますが、そう行った上澄みの言葉を掬うのではなく、彼女はとにかく「記録に残る形の会話」をしたかったのだ、と思います。東北の人々と。
あの日あの時のこと。そのあと、7年間のこと。どんな生活を送られてきたのですか?という疑問。手、というパーツを主題として用いているのは、繋ぐ、繋がりたいという意識の表れ、と読み取りました。ご自身以外が撮影されていない写真を多く展示に用いているのも、同じ考えを持つ東北、東北以外の人々との写真を通じた対話が現されていて、総じて、展示のタイトルにもある通り、a letter to・・映像を伴う往復書簡なのだと思います。

 

メッセージを読み取ってみる、伝えてみる

今回の展示、あるいは展示に至るまでの過程において、いろいろな反応があった、とのことです。
私自身も震災後の東北を歩いて、その写真で展示をしたことがあるのでその点はある程度分るのですが、決して100%賞賛ではなかったと思います。yamazakiさんがまとめられたブックの表紙に、寄せられた”言葉”が記されていますが、事実として中にはなかなかご本人にとっても辛いのではないか、というコメントもあります。
すごいな、と思うのは、それをきちんとまずは受け止めておられて、それでも”これからも続けていく”と仰っている点です。

冒頭にも少し書きましたが、展示の意味をメッセージの発信として位置付けているのであれば、それに対して寄せられる否定的な意見も受け止めつつ、それでもそれに反駁していくだけの”覚悟”も必要なのではないか、と思いますが、それをしっかりとお持ちなのだな、とお話ししてみて感じました。
この展示をご覧になる方は、一連の展示から放たれるメッセージをまず受け取り人それぞれいろいろな感想を持つと思いますが、それをyamazakiさんに素直にフィードバックしてみると良いのではないか、と思います。”a letter to”はそういう展示です。

Miho Yamazakiさん

gallery fu
4/1(日)まで、12:00 – 20:00(最終日は18:00まで)
月曜日休廊日

facebookのイベントページはこちら
Miho Yamazaki さんのwebサイトはこちら。

RM