SONY の135フルフレームミラーレスのスタンダード機、α7III(ILCE-7M3K)が2018年3月に発売になり、約3ヶ月が経過しました。
筆者は発売1ヶ月後に入手しましたので、2ヶ月ほど使ってきたことになります。
静止画の能力も動画の能力もたかい次元でまとまっている一台
αはSpeed(AF,連射性能重視)のα9,Resolution(高解像度重視)のα7R、Sensitivity(高感度重視)のα7S、そして万能型の標準機α7と各々性格づけされてライナップしており、無印のα7は、R、Sに与えられているとんがった 性能を持たない代わり,万能型のハイアマ向け機種としての味付けをされています。
とはいえ、αシリーズはα9が新しく市場に登場し、α7シリーズは現在順次モデルチェンジの時期で、α7RIIIに引き続き登場してきたα7IIIは現時点ではαの最後発機であり、α9から引き継いだAFユニット 、そして高感度機であるα7SIIを上回る高感度性能を搭載してきていているいわゆる下克上機であり、今後のフルサイズミラーレスの潮流を作る1台として評価されています。
また、動画撮影においても、動画撮影一眼カメラとして確たる立場を確保しているα7SIIとほぼ同等の性能を有しており、XAVC Sフォーマットの4K30p,フレームレート100Mbpsの動画を外部レコーダを使うことなく本体内SDカードに収録することが可能です。
私自身はα7IIIは静止画6割、動画撮影4割ぐらいの比率で運用していて、静止画、動画いずれの撮影能力においても高い次元でまとまっている、と感じており、静止画にも動画にも一眼カメラで対応する、という使い方には最も好適な1台ではないかと思います。
また、お値段もリーズナブル(このクラスとしては・・という意味ですが)と言える価格帯に抑えられている、と言えるかと思います。
さて、α7IIIの”良いところ”に関しては、著名なフォトグラファーによる使用レビューや、鬼のようなレビューアがテストした良記事がいくらでも見つかりますし、私自身はまだカメラの能力の方が高すぎる、と言いますか、できることが満載で、まだカメラの潜在能力に追いついけずに持て余している状況ですので(笑)、レビューというほどのレビューはまだ書けません。
なので、それは余所のサイトにお任せするとして、ここがもうちょっと良ければもっといいのになぁ・・・と感じていることをいくつか書く、という若干ナナメ”下”からの目線から実況でお送りしたいと思います。
もしかすると、そういう点は人によって購入の決め手となったり、反対に見送る材料になったりするのではないか、と思いますので・・。
その1:マルチセレクターの操作性がイマイチ
α7IIIから、マルチセレクターが装備されました。ちいさいジョイスティック形状のコレです。
フォーカスポイントを移動させるために使うデバイスですが、個人的にはこの装備は待望していたものでした。
α7II、α7SIIなどではフォーカスエリアがゾーンやフレキシブルスポットなどに設定されている場合、メニューやカスタムボタンから”フォーカスエリア”を呼び出してから、コントロールホイールなどでフォーカスポイント位置を操作する、という感じでしたが、これが結構煩わしく、直接的にフォーカスポイントが動かせ且つフォーカス操作できるのが良いかな、と思っていました。
中央1点しか使わない!などの運用をされる方にはあまり影響はないかもしれませんが・・
で、α7IIIはまさにこれを実現する、待望のマルチセレクターがつきました。つきましたが、これが残念なことに使いづらいのです。原因は恐らくですが”高さがない”ことにあるかと思います。
同じ様にマルチセレクターを有する他機種(Panasonic GH5S:ちなみにGH5/GH5Sでの呼称はジョイスティック)との比較です。
GH5sのものはちょっと高さがある・・よりジョイスティック形状なのがお分かりでしょうか?
対してα7IIIのものはより平板な形状です。このため、指のかかりが悪く、”押し”操作と”移動”操作がごっちゃになりやすいのです。
フォーカスポイントを動かそうとしているのに押してしまってフォーカスが動いたり(私はカスタマイズでマルチセレクタの押し操作にフォーカス動作を当てています)その反対の動作が起こります。
操作のしやすさでいったら、断然GH5Sのほうが(相当)上です。
なお、α7IIIはタッチ機能も搭載されるようになりフォーカスの移動もタッチ機能でも可能です。タッチパッド操作、といって、背面モニタで撮影している時だけではなく、ファインダーを覗いている最中でも背面モニタの一部(あるいは全部)をタッチ操作するとフォーカスポイントを移動させることができます。こっちに慣れればセレクターではなくタッチパッド操作のほうが良いのかもしれません。
ただ、この移動間にも少し癖があるのと、”フォーカスの移動”しかできないため、フォーカス操作は結局AFボタンを押さないといけないので、2アクションになってしまいます。
結局、AFエリアの移動にマルチセレクターとタッチ操作の両方が可能でありながら、なんだかどちらもイマイチ・・な状態になっているのです。
その2:筐体(高さ方向)がコンパクトすぎる
これは色々なところで言われていて、α7IIIだけではなくて歴代のα7そしてα9まで関係していることで、”α”,”小指あまり”などのキーワードでググるとあまた情報がでてきます(笑)
筐体があまりにもコンパクト・・特に高さ方向を・・に設計すぎて、グリップした時に右手の小指がうまくかからずホールドしづらい、という問題です。
これを解消するためにエンドグリップやリグを足す技が色々と試されているようです。
RRSのこんなのとか。
ただ私自身は、男性としては小柄なほうで手は小さいほうなので(指は長いんですがw)、あまり小指あまり現象は影響していません。
むしろ、”ダイヤル系”の操作のし辛さのほうが影響しています。
筐体をコンパクトに作りすぎているせいで、ダイヤル類の厚みも少なく且つ全般的に小さく、さらには配置されている場所も悪くて、なんだか他社のカメラと比較すると”難あり”なのです。
筐体の大きさだけでみると、マイクロフォーサーズ機であるGH5Sと比較しても一回り小さいです。(まあ、GH5Sがマイクロフォーサーズ機のなかでは大変大柄なんですが)
操作系がタッチパネル等に集約されているコンパクト機などは徹底的にコンパクトにすると良いと思うのですが、α7IIIはターゲットがハイアマ層で、直接的な操作を可能とするボタン類やダイヤル類が数多く配置されています。なので、ある程度は筐体の大きさを確保してあったほうが良いのではないでしょうか。
いままで評判の悪かった録画ボタンの形状が見直されたり位置も改善されたり、グリップが深くなって握りやすくなったり筐体設計もすこしずつ変化はしているのですが、もうあと一回り大きく造っても十分小さいので、今一歩”ゆとり”をもった設計になると嬉しいですね。
その3:4K30p動画撮影時にクロップファクターがかかる
これは動画を撮影されない方にとっては関係のないお話なのですが、動画撮影時に一部の条件に於いてクロップファクターが適用され、画角が狭く(少し望遠になる)なります。
映像フォーマットがXAVC Sの時は発生せず、4K動画のフォーマットであるXAVC S 4Kを選択して4K撮影とし、更にフレームレートを30pとした時に適用されます。同じ4K撮影でも、フレームレート24pではクロップされません。
フルHDの時と4K30pの時の比較は以下です。
クロップファクターとしては1.2倍程度で、そう大きな画角変化ではないので対応は可能ですが、24pの時はクロップされないのに30pではクロップされる、など、複雑な仕様となっているので、頭に入れておかないと混乱します。また、α7SIIではこのような仕様はありません。(α9,α7RIIIはクロップされる模様です)
取り扱い説明書には小さ〜く記載されています(笑)
この辺りは、やはり撮像素子数をギリギリまで減らし、高感度性能、そして動画機能により特化した形で出てくるであろう”α7SIII”に一歩譲る形で割り切られているものでしょうから、仕方ないことかもしれません。
と、つらつらと書きはしましたが、文頭にも書いた通り総じて最近購入したカメラの中では”実用機”たるポテンシャルとコストパフォーマンスはピカイチだと思いますし、個人的には好きなカメラになりました。
同時に、最後に残った大物、”α7SIII”がどのようなスペックでやってくるのか、は非常に楽しみであるところです。