Irix 11mm F/4.0 Firefly for PENTAX を試す

投稿者:

先日、こちらの記事でIrix 15mmを手放し、11mmを発注したお話を書きました。
Irix 15mmを手放して、11mmを発注する

マニュアルレンズではありますが、コストパフォーマンスに優れ、なによりPENTAX Kマウントで使える貴重な超広角レンズ。
しかしながら、この度。
私Irix 15mm f/2.4 fireflyを手放してしまいました。

先日、すっかりそんなことも忘れて居たところに前触れもなく米国から段ボールの塊が届きまして、ようやく手元にやってきましたIrix 11mm F/4.0 for PENTAX!

と、思わずフォントをイジってしまいたくなるのですが、そう、IrixはいまやSIGMAもTAMRONもレンズを出してくれない、PENTAX Kマウント 135フルフレーム(DFA)のレンズを出してくれる貴重なメーカーなのです。
とはいえ、Irixから販売されているのはこの11mm f/4.0、そして15mm f/2.4という二本の超広角単焦点・・そしてそこからどーんと飛んで150mm f/2.8 1:1 MACRO・・と、少々とんがった商品ラインナップなので、なかなか手にする機会もないか、とは思いますが、それでも少しでも選択肢があることは嬉しいことです。

前玉の存在感(出目金具合)は15mm f/2.4をはるかにしのぎますが、口径がすこし小さくなった(f2.8→f4.0)ためか、重量や全体的な嵩でみると一回り小さくなったように感じます。

 

Irixについては併せてこちらの記事もご覧ください。
新興レンズメーカー”Irix”のレンズを試す。その1

ちょっとだけですが春の昭和記念公園に持ち出してテストしてみました。今回は写りやその描画で気になった点を記載しており、外装やパッケージングに関してはまた別記事を書く予定です。

 

すべてを呑み込むような画角

なんと言っても、135フルフレームのセンサーサイズをカバーする焦点距離11mm、画角126°が生み出す非日常的な世界、そして圧倒的なパースペクティブがその魅力です。

PENTAX K-1 , Irix 11mm f/4.0 Firefly

 

PENTAX K-1 , Irix 11mm f/4.0 Firefly

これより画角が広いレンズは魚眼レンズぐらいになりますが、魚眼レンズは魚眼レンズでまた特別な世界なので、”超広角”としての描画、という側面からみれば、かなり限界いっぱいぐらいまで攻めているレンズなのではないか、と思います。
15mm F/2.8と比較すれば、焦点距離はたった4mmしか変わりませんが、画角は110°→126°と16°もの差となり、ファインダーの中の世界も相当な差が現れます。
なんでもない公園が途方もない奥行きを持つ草原に変身したり、普通のソメイヨシノの木が何十メートルもあるような大木に化けてしまう・・そういった非現実感の演出がこのレンズの最大の魅力です。なお、MF専用ですがこの手のレンズの特性として被写界深度が恐ろしく深いため、4,5mから向こうはすべて無限遠だといっても過言ではありませんので(笑)(事実、距離目盛りも2mまでしか刻印がありません)、絞り開放で最短撮影距離にちかいところで撮影するとき以外、大体無限遠位置に合わせて撮影すればよいことになるのかな、と思います。

 

レンズ中心部は高い解像力だが・・

極端に被写界深度が深いこのレンズですが、それでも最短撮影距離(0.275m)での開放撮影では背景をボカしてワイドマクロ的な撮影を行うこともできます。

PENTAX K-1 ,Irix 11mm f/4.0 Firefly

 

ただ、開放&最短距離での撮影はかなりクセがあります。この画像の中心部分を等倍で切り出してみました。

絞り開放でも、中心部分の解像力は大変高いと思います。

ただし、そこから周辺部に欠けては急速に画質が低下し、単焦点なのに露光間ズームをしたような、良くいえばダイナミックな(笑)画像となります。また、この低下ポイントがはっきりしている・・・といいますか、なだらかに流れ始めるのではなく、ある地点から急激にそうなります。下の画像で示すとおり、赤丸の枠内は比較的安定した画質なのですが、そこから一歩はみ出た途端劇的に変わる感じが。

ユニークといえばユニークで、私はこのクセは面白いな、と感じますが、ダメな人には全く受け入れられないと思います。ただ、この現象は絞れば絞っていくほど解消していきます。

 

ゴーストの出現にも要注意

前玉が極端に飛び出している形状なので、正面や側方からの光に対してはどうしてもゴースト、フレアの類がでてしまうことは避けられないと思います。うまく特徴をつかめば、それを生かしたような撮影をすることもできることはありますが、このレンズのゴーストはちょっと難しいです。
マイクロではない、フォーサーズユーザーの皆様はご存知かもしれませんが、フォーサーズマウントにもZD 7-14 f4.0(14-28mm相当)というレンズがあり、これもIrix11mmと同じように極端な出目金構造のレンズです。
このレンズを太陽にまっすぐ向けると、日輪のような赤いリング状のゴーストがフワッと現れて、それを一種”後光”のように見せたりした写真が撮れました。
Irix11mmでも同じ現象が発生します。ただしZD 7-14mmのようにきれいな真円で出てくれればよいのですが、Irix 11mmでは135フルフレームをカバーするしているためでもあるのか、この”円”が大きくイメージ外に飛び出てしまいます。なので、7-14の真円ゴーストのように写真の効果として扱うのはちょっと難しいな、という印象です。

どこに光源を取り込むか、で発生したりしなかったりしますが、中央付近に配置すると豪快に発生します。ファインダー内でもはっきり見えますので、出ない位置にうまく光源を配置するか、f5.6~f8.0ぐらいに絞ると解消してきます。

また、かならずリング状のゴーストになるか、というとそうでもなく、次の写真のような赤丸部に示すような、舌状のモノが発生することもあります。

これも絞ればある程度は解消しますが、写真として許容できないケースでは要注意です。
これだけの画角だと、意図しない場所に強い光源(太陽)が入り込んでしまう場合も多いので、これまた要注意です。

 

扱いや癖はいろいろと難しいレンズですが・・

と、いくつかの特徴的な”くせ”があって、これからもいろいろな条件でつかうとなんだこれはー?というような現象が出てくるかもしれません。お値段も控えめでリーズナブルなので、お値段なりに・・という感じでしょうか。
ただ、このレンズでしか取れない唯一無二の世界がありますし、さまざまなくせも時には味方してくれることもあるのかな、と思います。
何でもない日常空間をダイナミックで非日常的な世界に演出してくれる能力を有する、という点でおススメできます。

PENTAX K-1 , Irix 11mm f/4.0 Firefly

PENTAX用だけではなく、キヤノンFE、ニコンF向けにもリリースされています。

RM