本日は横浜、石川町のギャラリー、Gallery fuで開催中の写真展、生越文明 写真展「7’th Heaven 至福の時」をご紹介致します。
5/25より開催中、6/3までです。(月曜日休廊)
難病と共に
作家、生越文明さんは現在腎臓の難病、”多発性嚢胞腎”を罹患され、1日〜2日おき、週3回の血液透析治療を必要としています。
一方で、長年エンジニアとして勤務されてきた会社を昨年退職されて、現在は写真家として依頼撮影やワークショップをこなしつつ、作家として今回のような展示も行う多忙な日々を過ごされています。
筆者は生越さんとは旧知の間柄となって大体10年ほど近くになり、その当初は同じ写真講座で学んだり、グループ展に出展したり・・とともに写真活動をさせて頂いてきました。
当時はまだ病状もそこまで深刻なものではなかったのですが、2012年、13年ごろからは少しずつ腎臓の数値が悪化している事を伺うようになり、撮影の打ち上げだ!と皆で飲み食いしている横で”俺、サラダ”などと違うものを口にされたりするようになっていましたが、そんな中でも精力的に全国を回られたり、お仕事で関連の強かったドイツで撮影されたり、個展をされたりしていました。
しかしながら、2016年からはいよいよ腹膜透析が始まり、それもあまり予後が思わしくないことから昨年から血液透析に移行することとなりました。
日本各地や海外を歩いて撮影する撮影スタイルは大幅に見直さざるを得ない状況になったわけです。
しかし、生越さんはそんな今の状況を受け止めた上で、「そういう生活になったからこそ、生きている喜びを健康だった時より、より強く感じる。透析が終わった後に食べる卵かけゴハンにすら幸せを感じる。そして、何気ない光を撮れることが生きていることそのもの」と仰り、難しい病気を抱えながら活動することのハンデを強調するのではなく、むしろそれによって得られる何か、についてお話してくれます。
何のために写真を撮るのか
生越さんの写真は至ってシンプルです。透析があるため、ご自身の地元である横浜からは遠く離れることができません。撮影されているのは横浜の光と影を捉えたモノクローム。
強いコントラストで硬調なモノクロが生越さんの持ち味で、ほとんどすべての写真を標準単焦点レンズで撮影して、美しい光と影を美しくプリントする、シンプルなプロセス。
もう一つ、横浜を単純な風景として捉えたりノスタルジックに写したりするだけではなく、幾何学的な捉え方をしたり抽象画のような光の運びを切り取るのが一つのテイストになっています。
ご自身の地元の光景に当たる光と影、という何気無い写真ではありますが、光も影も、とても強く写されています。
生きていることそのものが光であるとすれば、思うようにはいかない事への怒り、病状への不安のようなものが影なのかもしれませんが、今の生越さんにとってはその両方がご自身を突き動かす原動力であり、写真を撮影する意味そのものになっているのだと思います。
生越さんは「自分と同じく病気や障害を抱えている人に見て欲しい」と仰っていましたが、私は例えば”カメラは手にして見たものの、何をどう撮ればいいんだろう?”と、何となく迷いを持っている写真愛好家の方にも見ていただけると良いのではないかな、と思います。決して特別な何かを撮る=写真を撮る、ではないのです。
また今年還暦を迎えられたそうで、年齢や今の状況によって、いろいろなことを諦めている・・そんな人々へのヒントもあるかもしれません。
6月3日の展示最終日、15:00からはDMデザインを担当されたアートディレクター、三村漢さんとのトークショーも予定されています!
生越文明 写真展「7’th Heaven」
2018年5月25日(金)から6月3日(日)
12:00~20:00日曜日は18:00まで 最終日は17:00まで
入場無料 月曜日休廊
トークイベント ゲスト:三村漢(アートディレクター)|6月3日(日)15:00から
Gallery fu
231-0868 横浜市中区石川町1-31-9
070-6429-8597
JR石川町駅南口からすぐなのですが、ちょっと行き方にコツありますので地図載せておきます。