キヤノン EOS R 風景写真に向かない3つの理由

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キヤノン初のフルサイズミラーレス EOS R ですが、風景写真に向かない理由が3つあります。新製品はもてはやされる記事ばかり挙がりますが、自然環境の風景写真の使用を想定すると残念ながら風景写真のメイン撮影機として選ぶことはできそうにありません。風景写真に限らず表立って取り上げられない EOS R のウイークポイントを紹介します。

 

キヤノン EOS R 風景写真に向かない理由

EOS R はキヤノンミラーレス上級機ではなく、フルサイズ一眼レフのエントリー機 EOS 6D Mark II あたりに位置づけられています。

上級機ではないことから、多彩な状況・・例えば自然環境の過酷な状況に向かないことを想像できますが、実際EOS R のスペックからすでに自然環境の風景写真でメインカメラとして運用するには難しい・・という理由を挙げます。

 

キヤノン EOS R 風景写真に向かない理由1:タッチパネル

EOS R が風景写真に向かない理由1つ目は、タッチパネル操作を撮影設定の重点に置いていることです。特にAFポイント設定について難しい面があると考えます。

自然環境をメインとした風景写真は、四季を通じて主に以下の撮影対象が挙げられます。

  • 春:ソメイヨシノを主とする桜の撮影
  • 夏:緑鮮やか、生命力のある海・山の撮影
  • 秋:極彩色ともいえる紅葉の撮影
  • 冬:雪景色の撮影

春、桜の時期は昼に日差しが差せば暖かいですが、日没とともに一気に寒くなる。一般的に行われるお花見は昼夜問わず、寒い体験ばかりではないでしょうか?

秋は9月中旬~下旬ごろから標高の高いエリアで紅葉の見頃を迎えます。ロープウエイを使えるスキー場などの一般観光で賑わいをみせ、撮影においてはバスで2,300mまで気軽に行ける乗鞍など人気です。乗鞍は特に早朝撮影が人気ですが、朝晩は冷え込み、はやくも9月にして氷点下になりることが珍しくありません。

これらから、風景写真は秋から春まで手袋を装着して撮影することが一般的です。

加えて夏山登山においては強い紫外線から守るために薄手の手袋をすることと、夜間は一転して冷えるので夕景~星空~早朝撮影をする場合、手袋を重ねて装着するか厚手の手袋は必須となり、タッチパネル操作をする場合は毎回手袋を外す手間が増えます。

特に厳寒期の登山は手袋を外し凍傷にかかる恐れがあること、手袋が強風で飛ばされでもしたら命の危険性があるため、着用した手袋は絶対に外さないことは登山指導上、常識です。

一般的な風景写真にかかっていく上で、年間の半分は手袋を着用することになるので、のタッチパネル操作が半年間できなくなります。

タッチパネル操作できない場合でもAF操作できますが、AF操作アクションが煩雑になります。

素手であればAFポイントを背面液晶で押すタッチパネル操作の1アクションで直感的な操作ですが、それ意外となると、

  1. AFフレームボタンを押す
  2. 十字キーボタンを押す

という、2アクションでAFポイントを移動させることになります。

アクション数は1つ増えただけですが、そのあとAFポイントを十字キーで動かすAFポイント移動が緩慢なので、AFフレームボタンを押し、十字キーで右端から左端まで操作する場合、慣れても3~4秒はかかるのではないでしょうか。

いくら本体自体のAF測距が早くなってもAF移動に時間がかかるのはいただけない。遠くの景色がメインであればさほどAFポイントの移動はないかもしれませんが、花など撮る場合AFポイントの操作は肝といえる要素です。

風景写真を長年やっているととにかく増えるのが手袋です。カメラとの接点・操作性のいい手袋を探し求めた結果、手袋が増えていきます。風景写真に欠かせない手袋の使用で排除されるタッチパネル操作=素手で扱うカメラと想定されているため、風景写真には向かない理由の1つです。

 

参考)他社ミラーレスの場合

フジフイルム ミラーレス機の場合
フジ X-T1になかったフォーカスレバーが、X-T2は操作性向上のために追加されました。このおかげでファインダーから目を離さず、直感的に手袋まま操作できます。


 
ソニー ミラーレス機の場合
ソニー α9で新設されたマルチセレクターはα7 IIシリーズにありませんでした。これは風景写真愛好家にとって待望のAF選択ボタンとなりました。そしてα9で、コントロールホイールが大型化しました。これも総合的な操作性向上のためと思われます。

 

キヤノン EOS R 風景写真に向かない理由2:マルチファンクションバー

機能割り当てができ、スマホを使うかのような軽快な操作性で話題を呼んだEOSシリーズ初の新設ボタン:マルチファンクションバーですが、理由1で挙げた理由で想像できるよう手袋をしたままの操作はできません。

マルチファンクションバーは3アクション(スライド操作・右タップ・左タップ)を集約するカメラ業界において画期的な操作ボタンです。

(3つのアクションで AF設定・ISO感度変更・WB設定・動画撮影機能、ピント確認などの撮影設定や画像送り、機能ショートカットなどの設定が行える多彩な機能を集約)

しかし、残念ながら風景写真においてEOS R のマルチファンクションバー1年のうち半年は使われることがないかもしれません・・

理由の2つ目は、AF操作・タッチパネルを例にした時点で想像できることでしょうか。

 

キヤノン EOS R 風景写真に向かない理由3:バッテリー

EOS R にEOS 5D 6D系で使われていたバッテリーパック LP-E6N を引き続き採用したことはメーカーの姿勢として好感を持ちました。

しかし、1865mAhと大容量バッテリーのLP-E6Nでも撮影枚数は、従来EOSの半分(半分以下)になる見込みです。

撮影可能枚数 目安常温(+23℃)

  • EOS 5D mark4:約900枚
  • EOS R:約370枚

 

ミラーレス機は背面液晶によるバッテリー消耗に加え有機ELが電圧を要求されるもととなります。バッテリーに対する要求が必然的に大きくなるので、バッテリーが活性化しにくい低温環境において十分な電圧を確保できない場合があります。

個人的な経験ですが、フジミラーレス機:X-T2、オリンパスミラーレス機:E-M1 Mark II は冬山でもギリギリ動いていました(1バッテリー:100枚くらい)が、ソニーα7RⅡは数枚撮って終了。予備バッテリーを2個しか持っていかなかったために、苦労して登った山頂でまったく撮れなかったことがありました。撮影目的で撮れないというのは残念しか残りません。

冬季観光で人気のある蔵王の樹氷帯はロープウエイ山頂駅からすぐですが、寒波が来ると-20℃をあっさり下回ります。光学一眼レフ機の2倍電圧を要求されるミラーレス機が、このような環境でどこでも撮影できるのか?という疑問はついて回ります。

登山して撮れなかったリアルな経験があるので、私はミラーレス機をあくまで使い分ける対象としてのみ扱っています。EOS R をいきなりメイン機として持っていくことはまず考えられません・・

登山でコンパクトにするには小物まで携行品の見直しを考えることが基本ですが、低温電圧の心配に加えて、荷物を最小限にしたい登山などでいつもの2倍バッテリーを持っていくことを強制されることになります。(そもそもバッテリー自体安いものではないですし。)

これらEOS R が風景写真に向かない理由3つ目は、バッテリー関連でした。

 

風景写真で使えるEOS R上級機に期待

繰り返しになりますが、EOS R はEOS 6Dといったエントリー機のミラーレス版ですので、万能性を求めるのは酷です。

キヤノン EOS R 風景写真に向かない3つの理由を挙げましたが、技術革新による新しいカメラには期待しています。

EOS R は単焦点レンズなど軽量レンズを付けて、普段持ちできるサイズ・重量としてのフルサイズカメラとしてとても魅力的です。

コンパクトさはそのままに、信頼性を向上した EOS R 上級機はいつ発表になるのでしょうか。

 

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