世田谷写真教室でモノクロ暗室体験して来ました!

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写真家・武藤裕也さんが主催されている世田谷写真教室。

世田谷写真教室(ストアカ)
世田谷写真教室(Hatena Blog)

小田急豪徳寺駅から徒歩7分の閑静な住宅地にあるアトリエを利用し、写真教室並びにミニスタジオを設けて活動されています。
その世田谷写真教室に、この度モノクロ暗室をなんとD.I.Yで構築し、ワークショップ、並びにレンタルを始められた、とのことで、早速遊びに作業させて頂きに行ってまいりました。

 

今更、なぜモノクロ暗室なのか?

改めて言うまでもなく、現在の写真の潮流はデジタル・・・さらには、それに用いるデバイスも変化してもはや主役はカメラですらなくスマートフォン。写真はプリントではなくデータとして鑑賞され、写真SNSであるInstagramには一日に膨大な枚数の写真がアップされ、”あっという間に生産(撮影)され、消費(SNS拡散)されていく”時代になっています。
対して、元々の写真の潮流出会ったアナログ・・フイルムで撮影し、銀塩プリントするプロセスは、チェキなどのごく一部のムーブメントを残して時代の片隅に追いやられています。

そんな時代になぜモノクロ暗室、アナログプロセスなのか。
武藤さんはご自身のブログの該当記事内で以下のように述べられていますので引用いたします。

写真をアップデートさせる必要がある
写真という形態は時代とともに変っていっている、つまり写真の価値が変わっていっているはず。例えば風景写真に個性を感じなくなったよう、表面に起こっていることに意味がなくなっているのではないかと考えています。といっても写真は2Dの絵柄なので表面はそもそもに当たる大事な部分です。そんな矛盾を抱えているのかも知れません。

写真は複製できるメディア
また、写真は複製できるメディアです。価値をものに置き換えると複製すればするほど薄まっていく原理はいうまでもありません。
だからフィルム写真の方が良いというものではなく、デジカメで富士山を撮っても、フィルムカメラで富士山を撮っても表面的には同じです。カメラは目的に応じた富士山の撮り方を選べるツールでしかありません。でも、そこに価値を見出すものがあるとしたら教養が関わってくるのではないだろうか? と感じています。

不完全性と手間にかかる魅力
デジタルカメラとフィルムカメラを比較するとフィルムカメラの不完全性に潜む魅力に気づきます。比較的簡単かつスキのない(完璧な)1枚を仕上げられるデジタルカメラと、不確定な要因を多く含むフィルムカメラ。完璧が溢れているからこそ、あえて手間がかかり、時には不完全なアナログプロセスが魅力的に思えてきます。それは、電車乗り換え検索で、遠回りルートを提案するアプリというのもあるくらい理解と価値の幅は広いのかもしれません。

予定調和に飽きてしまった
カメラが身近になると同時に写真展も比較的開催しやすくなりました。ただ、予想できる内容がすくなくありません。予定調和にいつまでときめきを維持できるのでしょうか。

※一部要約させて頂いております。オリジナルのblog記事もぜひご参照ください。→こちら

 

アナログプロセスの魅力

さて、筆者も実はアナログプロセスを自分自身の制作に使っております。それは、今回使わせて頂いた暗室でやるようなゼラチン・シルバープロセスではなく、先日記事にも書かせて頂いたオルタナティブ・プロセスなのですが、その理由としては、私の作品がちょっと特殊なトーンを持っていることにあります。
グレーの狭い範囲の中で微妙なトーンを出し分けたいのですが、インクジェットプリンタによる顔料プリントではなんとなく平板に感じられてしまうものでも、非常に豊かなトーンを含ませることができたりすることがあります。また、インクジェットでは使えないような極薄の和紙にも感光駅を塗布することさえできればプリントすることができ、背面からの透過光で浮き上がらせたり・・など、インクジェットプリントでは実現できないいくつかの事が実現できます。
武藤さんご自身も上記ブログで書かれていますが、フィルム写真の方が良いとか銀塩プリントの方が優れているとかすいう話ではなく、撮り方、もしくはプリント表現として選べるツールとしてはまだまだアナログプロセスは魅力を有する選択肢なのです。

 

先ずは体験してみること

などと冒頭から長々と小難しいことを書いて来てしまったのですが^^;, 意外と簡単に体験できることがわかるかと思います。
世田谷写真教室の暗室はとてもコンパクトで、同時に多くの人数での利用は難しいのですが、裏を返すと空いてさえいれば、ほぼ貸切で使用することができるのです。”何か超ベテランとか怖い人とかいて色々怒られたりしたらどうしよう??”などという心配は無用です。

武藤さん主催、モノクロ暗室未体験者のための暗室ワークショップも随時開催されています。
以下に、ワークショップの申し込みページ(ストアカ)のURLを貼っておきます。
世田谷写真教室 モノクロプリント:暗室体験2時間ワークショップ

基本1、2名、最大3人まで作業できますので、お友達同士などでお誘い合わせの上でのご利用などがよろしいのではないでしょうか?
135〜6*7サイズまでの現像済みモノクロネガフィルムを持参すれば、ワークショップでは一般的なRCペーパーを用意してくれるので二時間の間でかっこいいモノクロプリントを作ることができると思います。でも、何枚かしかできません。二時間はあっとうまに過ぎてしまいます。 大量消費するだけが写真ではなく(時にはそれもまた必要ですが)、一枚一枚手を動かして作リ出していくのもまた写真である感覚を体験頂ければと思います。

この日の暗室の様子をムービーにしましたのでご覧ください。(1分40秒弱、音付きなので再生環境注意)

もうあまり時間がないのですが、5月末まではワークショップなんと500円だそうです。

 

個人の作品制作にも

今回、筆者は一般的なモノクロネガフィルムからのプリント&引き伸ばしではなく、デジタルネガフィルムを用いて密着焼きによるプリント作業をさせて頂きました。
体験、と題してこの記事を書いてはおりますが、私自身はオルタナプロセスに加えて銀塩プロセスもすでに作業経験があるので、今回は半ば自分のプリント作りのために使いました。
初めての方、とりあえず体験してみたい方にはワークショップがオススメですが、何度か経験がある、自身の作品作りのために篭って制作したい・・・といったような要求にも利用することができます。
こんな時も小さい暗室ならではのメリットが生かされると思います。

武藤さんは24時間営業だと仰っていましたが(ホントかな・・笑)、スケジュール上空きがあれば、ある程度の要望や無理は聞いてくれるのではないでしょうか?(武藤さんお願いします!)
私も今回は20:00ごろから22:00すぎまで使わせて頂きました。
お値段も価格破壊的に安いのでは・・

詳しくはストアカURLでお問い合わせください。
また、設置機材一式は以下の通りです。

引き伸ばし機
フジ N690MF(135~6×9)
meopta axomat student(135)

タイマー
LPL ET-200
Lucky timer3

ネガキャリア
135
6×7
645~6×9 ガラス挟み込み(DG120)

多階調フィルター
イルフォード マルチグレードフィルター

イーゼル
LPL ユニバーサルイーゼルマスク

スコープ
LPL フォーカススコープ

ライトボックス
堀内カラー イルミックスⅠ型

現像プリント行程
バット×4(現像・停止・定着・水洗1)
水洗2(流水)
暗室と別に、水切り作業エリアあり

暗室の主:武藤裕也さん
RM