フルサイズ・ミラーレスは小型システムとなりうるか?

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135フルフレーム:ミラーレス化でシステムは劇的にコンパクトになるか?

昨年終わりより、NikonのZシステムを皮切りにCanonのRシステム、Leica/Panasonic/SIGMAのLマウントアライアンスと続き,まさしく135版フィルムフルフレームサイズ…いわゆるフルサイズ・ミラーレス時代の到来となりました。
フルサイズ・ミラーレスシステムとしていち早くα7、α9シリーズを上市したSONY FEシステムと合わせ、キヤノンのEOS R、ニコンのZ6,Z7が発売され、そして海外で正式発表となったパナソニックのS1,S1Rなど、役者がそろいつつある、というところでしょうか。
ところで、”ミラーレスシステム”としては、オリンパス、Panaconicが中心となっているマイクロフォーサーズアライアンスが先行しており、元々小型フォーマットであることを特徴とするマウントであることから特にオリンパス社のPenシリーズを中心にミラーレス=小型なシステム、というイメージが定着していることと思います。
果たして、このイメージが135フルサイズセンサーのミラーレスにそのまま当てはまるでしょうか?
あくまで私の個人的な見解ですが、答えはノー(部分的にはイエス)だと思っています。
もう少し正確にいうと、カメラボディ本体は一眼レフ機よりコンパクトになりますが、カメラシステム全体で考えると一眼レフ時代とそれほどは変わらない、という感じです。

フルサイズ・ミラーレスの先達であるSONYのFEシステムの例も引き合いとしながら、そう考える理由を少し書いてみたいと思います。

 

ショートフランジバックによる光学設計の自由さゆえ

Zマウント、Rマウントともにこの点を大きく強調しています。ミラーボックスが不要なので、マウントフランジとセンサーの間の距離が短くできるのは明らかです。
フランジバックが短いことは一般的にレンズの光学設計にはプラスに働いて、特に広角レンズにおいてはレトロフォーカスを使って主点を奥にずらす必要がなくなる・・この分のレンズを減らすことができるので、コンパクトなレンズが設計できます。
ソニーEマウントの24mmF1.4GMなどは、いままでの常識をひっくり返すようなコンパクトな広角大口径なレンズとなっていますよね。
SONY Eマウント FE 24mm F1.4 GM :重量445g

Aマウントでは24mmF1.4は出ていなかったので単純比較はできませんが、近いところでいくとDistagon T* 24mm F2 ZA SSMがありました。重量は555g。FE 24mmF1.4 GMのほうが一段大口径でありながら100gほど軽量なのです。

これが、(部分的にイエス)と書いたゆえんで、超広角~広角レンズぐらいを多用される方には福音=システムのコンパクト化につながると思います。

一方で、このような光学的な自由度はレンズ設計者に羽を与えます(笑)
羽が生えちゃうとどうなるか・・・いままでに実現できなかったようなレンズ、たとえばZマウントなら開発発表されているNoct 58mm F0.95、Rマウントなら各方面で高い評価が出始めている28-70 F2、50mmF1.2など、とにかく”光学性能”を追求したレンズが実際に発表されてきています。これらのレンズの重量、寸法をご覧になったでしょうか?おおよそコンパクトとは言い難い状況です。

そしてLマウントの先陣を切って、Panasonicからもレンズ発表がありましたが、標準単焦点、”S Pro 50mm F1.4″の重量は955g・・・こちらも巨艦です!

そしてお値段も巨艦です!!

もちろん、各社F4通しズームをはじめとして、すこし暗めでコンパクト、そしてリーズナブルなズームや単焦点も今後どんどんラインナップされていくことでしょうが、果たしてNikonZ6,Z7やEOS Rを買い求める層が、コンパクトなコンシューマ向けレンズ”だけ”で満足できるか、は(自分自身の経験と照らしても)大いなる疑問です(笑)
またしばらくするとSIGMA様あたりが現行Artラインのような、リーズナブルで恐ろしく明るく写りがよい(ただし大きく重たい)単焦点をラインナップしてきたりしたら、それらをカメラバッグに2、3本詰め込んで重そうに歩いているアナタの姿が見える・・気がします。

また、望遠レンズについてはフランジバックをある程度長くとらないといけないことから、逆にメリットが多くありません。
明るく、なにか違った写りをするような明るい単焦点や望遠レンズが好きな方にとっては、システム全体でみればほとんどかわらないか、むしろ増量となる予感すらします。
これまたソニーEマウントでいくと、例えばFE 50mmF1.4(Planar)は、一眼レフ向けのマウント、Aマウント時代に発売されていた同クラスのレンズと比較すると、”下克上”しちゃってます。

SONY Eマウント Planar T* FE 50mm F1.4 ZA :重量778g

 

SONY Aマウント Planar T*  50mm F1.4 ZA SSM:重量518g

FEのほうが260gも重くなってるじゃないですかー。

 

太いマウント径

ZマウントはFマウントと比較して11mm、RマウントはEFマウントと同型・・ということで、マウント径は一眼レフと同じか太くなっています。
なので、一眼レフ時代とレンズの”太さ”は劇的には変わらないことを示します。
ミラーレス、とはいってもセンサーが135フルフレームサイズ、このセンサーサイズをカバーするイメージサークルを作り出さなければならないので、今までより劇的に細くしたりすることはできず、結果としてはミラーレスだからといって、マイクロフォーサーズ向けミラーレス向けばりにコンパクトなレンズは容易には出せないと思います。

 

カメラにはある程度の大きさは必要

SONYのα7には”小さすぎる”という声もあります。小さすぎて、L字プレートをグリップを延長する目的でつける方も多くいるぐらい。

過去、この記事にも私自身のα7IIIの使用感を書いたのですが、たとえば男性の手には小指がかかるところがなくグリップしづらかったり、せっかくのジョイスティックも操作性が良くない、などの問題があります。
Z7/Z6、EOS Rなどを見ていると、本当はもっと小さい筐体にできるのにあえて少し大きく作っているような感じがあります。またS1/S1RはGHシリーズの流れを汲んで動画撮影での放熱なども考慮しているかもしれませんが、これらよりも更に大きく作ってきた感じですよね。

ミラーボックスがない分、筐体の厚みは圧倒的に薄くなってはいますが、全体的な”嵩”でみるとそれなりにあってレフ機とあんまり変わっていないなあ、と感じていて、更に今後プロシューマー、プロ機をターゲットにしたような機体が出る場合は、タッチやメニューではなくダイヤルやジョイスティックによるダイレクトな操作系を実装するために、いくらかは大型に作るような潮流になるのではないか、と予測しています。それは、マイクロフォーサーズ機でも・・・先日発表となったオリンパスのE-M1Xなどを見ていてもそう感じます。

 

システム全体で考える

私自身は今現在のシステムがα7III(は、つい先日手放してしまったのですが)、Panasonic G9 PROそしてGH5中心で組んであり、実際にミラーレスの恩恵にあずかりながら撮影をしている一人です。ミラーレスならではの撮影スタイルもありますし、明らかに今後のメイン・ストリームに踊りでました。

”ミラーレス”という言葉がこの世に誕生しておよそ10年。初の商用ミラーレスであるPanasonic Lumix G1のキャッチコピーは「女流一眼」でした(懐かしい)
繰り返しになりますが、マイクロフォーサーズに始まったミラーレスには小さい、コンパクト、というイメージが定着していますが、今後主流となるフルサイズ・ミラーレスに関しては100%当てはまるわけではないと考えています。

”システム全体として”劇的に小さく!という結果を望んでミラーレスを導入することを考えているのであれば、135フルフレームでの一眼レフ→ミラーレス移行ではなく、ミラーレスの中でもマイクロフォーサーズ機など、そもそもセンサーサイズが小さい規格の機体をより真剣に検討したほうが幸せになれるのではないかなあ。

RM